電車内の放送

帰りの急行電車に座れてラッキーと思ったのも束の間。
隣の中年のおっさんが、やれ新聞を広げたりカバンをガサゴソやったり、どうも落ち着きのない様子で、あぁ、イヤなのの隣に座っちゃったなあと思っていた。

ほどなく発車時刻となり、20:48発の急行電車は走り出す。
車掌による毎度の車内アナウンスが、ごく当たり前にスピーカから流れてきた。


その刹那、おっさんは密閉型の大型ヘッドフォンをおもむろにカバンから引っ張り出してアタマにかけた。
私は最初それを見て「おっさんのわりには、ずいぶん音にこだわって音楽を聴くのねぇ」くらいにしか思っていなかった。
しかし実際は、車内アナウンスが執拗に流れているのがそうとう気に入らなかったらしい。
おっさんはヘッドフォンを荒っぽく外すとカバンからケータイを取り出し、どこかへ電話をかけ始めた。


おっさんは電話を耳に当ててしばらくそのままの姿勢でいたが、ようやく相手は出たようである。

電話で云うには「社内放送の音が大きすぎるので、小さくしろ」ということだった。

たしかに私もときどき同じコトを思うことはあるが、実際に電車から鉄道会社に電話するヤツがいるとは思わなかった。

はたして、アナウンスは次の停車駅に着くまでは流れることもなく、しばし平穏な時が流れていたがそれも束の間。
10分ほどで停車駅が近づいてきて、またまたアナウンスが流れ始めた。
しかも心なしか、さっきより音量が高いようである(汗)

おっさんはまたまた荒っぽくヘッドフォンをはずし、電話し始めた。
「さっきからぜんぜん改善されてないんですけど...云々」と云っていた。
真隣にいる私としては、ヤバい!このヒトはなんだかおかしい!と思い始めた。
いつもなら座れればうたた寝でもするところだが、もしコイツがナイフなんか持っていて、暴れ始めたらどうしようと、今日は身を守るため、目を皿のようにして開いていた。