処方箋

いまどきは大型のドラッグストアがあちこちに幅を利かせていて、あまり見かけなくなってしまったが、個人経営の薬局には必ず「処方せん」という張り紙がされていたものである。 いまでこそ、薬の処方を記述したアレだなとわかるが、小学生のころは「気にせんでもヨイ」とか「そうはさせん」などの「せん」だとばかり思っていて「ああ、この薬局では処方はしないのね」と理解していたからバカである。


薬局といえば、だれもがぶつかるナゾとしてもっとも印象深いのが、あの「明るい家族計画」の自動販売機だろう。 あの筐体サイズは、ドリンク類が出てくるにしては小振りすぎるし、かといって菓子類をわざわざ薬局の外で売っているというのも腑に落ちない。 薬局でなかなか買えない様子をラジオ・ドラマにしたものが作られたくらいなので、やはりアレをレジまで持っていくというのは、微細ではあるが、人生において乗り越えるべき問題といっても過言ではないだけに、そんなストレスから解放してくれるこの機械の存在は、ヒトによっては神仏がごときものなのかもしれない。


そういえば「家族計画」がらみで、大学のころの深夜のコンビニのバイトでの出来事を思い出した。
日付が変わるか変わらぬかくらいの時間帯だったと思うが、中学のときにちょっと気になっていた女の子が彼氏らしき野郎と連れだって来店し、彼氏のほうが、さも当然のごとくコンドームの箱をレジに持ってきやがった。

あのテの商品は、普通はいったん紙袋に入れてからビニールに入れるものだが、私ができたのはそのままビニールのいちばん外側に放り込むという、ホントにささやかな抵抗だった。 まあ、そんなことをしたところで、その後の二人の行為にはまったく影響なかったに違いないのだが...